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2011年 02月 16日

ハズレクジを引いた若者が個人店の焼鳥屋さんのカウンターで命拾いする噺。

一つの地域の個人店に通い続けていると、
映画やドラマに負けない物語に遭遇することが多い。
というか、こっちの方が、
2時間や24時間ではおさまらない、リアルな本物の劇空間。
それが個人店の魅力だったりする。

本日ご紹介するドラマのはじまりは、猛暑だった昨年の8月。
経堂西通りの入口にあった、たこ焼き&たい焼き「夢屋」を
一人の若者がうっかり引き継いでしまったのだった。。

紀州和歌山出身の大東くん。
都の西北を中退して元は芸人を目指していたが、
焼き鳥屋さんで修行した経験を活かして、
たい焼き屋で頑張ろうと一念発起しての小さな起業だった。

店を探していた時に紹介されたのが「夢屋」。
繁盛店だからという説明を現地を実際に確かめることなく
うっかり信用して契約してしまった。

が、数年前から営業していた「夢屋」は、
経堂西通り辺りの人間なら誰もが知っている
お客が寄りつかない店だった。
「泳げたいやきくん」の歌が小さなラジカセから流れ続ける
センスのない店。
店のスタッフと地域との交流もない不思議な店だった。

当時の記事がこちらにあります(←クリック)

「夢屋」を引き継いですぐ、
売れない店だと気づいた大東くんは一瞬途方にくれた。
聞いていた話と全然違う。どうしたらいいのか?

若いってこういうことなんですよね。

経堂も全く見ず知らずの土地だった。

途方にくれて、店が終わってから、なんとなく入ったのが、
経堂一のダメ親父を自称する長谷川一平さんの店鳥へい(←クリック)

そこで悩みを打ち明けると、噂が広がり、
近所のお店の人間や飲み助たちが何とかしたいと話すようになった。

きはちの常連さんのアパレル会社の社長さんは、
毎日のように店に立ち寄るようになった。
肉酒場 EL SOL
寿司屋の大将やラーメン屋のマスターも他人事じゃないと、覗いたり心配したり。
笑和堂でもソーシャルエナジーカフェでも、
大丈夫かなあの店?と気にすることしきり。

そんな中、大東くんも経堂なら何とかなるんじゃないかと思うようになり、
忙しい合間に他の店に挨拶に顔を出したりするようになった。

秋が深まった頃、ある店で一冊の「たい焼き本」に遭遇。

これが、この本。

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時川真一さんの「東京あんこ案内」なのだった。

東京の一流のたい焼きを紹介したこの本が、大東くんの運命を変えた。

閃いたのが、
厳選された豆を買って、あんこを手作りしてみたいということだった。

それまでは業務用のあんこを使っていたのだった。

あんこの研究を始めて、納得のいく味ができた時、
店の名前を小倉庵に変えた。

元々、芸人で、焼き鳥屋でも修行していたため、売り声には自信がある。
通りを往く人にどんどん声をかけ、どんどん試食をしてもらった。

すると年末あたりから、来る人が途切れない街のたい焼き屋さんになっていた。
いまは2人で何とかやっていけるようになったとのこと。

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元気に街往く人々に声をかけながらの営業。

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あんこは全て手作り。

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ぐつぐつ店頭で煮込まれるあんこ。
いい香りがあたりに漂う。

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たこ焼きもいける。

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街のおっせかいがセーフティー・ネットになったり、
実際に人を救うこともあるということ。

ハズレクジを引いた若者が
経堂西通りの焼き鳥屋のカウンターで命拾いをした話でした。

もともと鳥へいの長谷川一平さんも、
1970年代の半ば、30代半ばの頃、
大手服飾メーカーの営業マンだった人生に行き詰まりを感じ、
当時住んでいた桜上水の行きつけの焼き鳥屋のカウンターで、
悩んで人生終わりだよみたいなことを愚痴っていた時、
その店のマスターに、
「そんなこと言うんだったら、オレが銀座の鳥銀を紹介してやるから、
 修行して出直したらどうだい?」と言われたのが、
店を始めたきっかけだった。

個人店の魅力は、人の顔が見えるところで。
人の顔が見えるからこそ、人の会話があるわけで。
そんな個人店が複数あって、いろんな人のつながりが、
多様に絡み合っていると、
そこは魅力的な「地域」ということになってくる。

実は、経堂界隈。
そんな話が、いろいろたくさんある地域だったりするわけです。

案外、個人店のカウンターをきっかけに、
人と出会ったり、転職したりするようなことは、多い。
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by slowcomedy | 2011-02-16 15:12 | 経堂のような地域の力と可能性。


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